アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とはアトピー性皮膚炎とは、痒みを伴う発疹が繰り返される疾患です。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すという特徴を持ちます。かゆみは強く、睡眠、日中の生活に支障をきたすケースも少なくありません。適切な治療を受けないでいると、多くの症例でかゆみから皮膚を掻いてしまい、さらに発疹が悪化します。
もともとアトピー素因のある人の発症が目立ちます。乳幼児期に発症し、小児期に改善することも多くありますが、大人まで症状が続いたり、思春期や大人になってから発症したりすることもあります。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の大きな原因は、アトピー素因があると、皮膚のバリア機能の低下にあると言われています。
そして、そこに塵、埃、汗、細菌、ウイルス、摩擦などの環境的な要因が加わることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクが高まります。
また、かゆみから皮膚を掻きむしり、症状が悪化することでさらに掻いてしまう、という悪循環に陥るケースが少なくありません。

アトピーが発症しやすい年齢

アトピーが発症しやすい年齢アトピー性皮膚炎は、全体の約80%が5歳までに発症します。うち、乳児期の発症率が特に高くなっています。
厚生労働省の調査によると、4ヵ月児の発症率が12.8%、1歳6ヵ月児で9.8%、3歳児で13.2%、小学1年生で11.8%、小学6年生で10.6%、大学1年生で8.2%となっています。
大人になってからの発症は稀と言えます。

アトピーの検査と治療方法

検査

重症度の把握やアレルギーの関係が疑われる場合には血液検査を行いうこともあります。

治療

アトピー性皮膚炎の治療では、薬物療法とスキンケア指導を行います。

薬物療法

薬物治療皮膚の炎症・かゆみに高い効果を発揮する「ステロイド外用薬」が薬物療法の中心となります。「ステロイド」という響きに抵抗がある方もいらっしゃいますが、外用薬として使用する場合には基本的に全身性の副作用はありません。年齢、塗布する部位に応じて適切な強さのステロイド外用薬を選択いたしますので、ご安心ください。
また、状態により非ステロイド系外用剤(タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラスト)を使用することもあります。

タクロリムス

過剰な免疫反応を抑制する薬です。アトピー性皮膚炎の炎症、かゆみを和らげます。
ステロイド外用薬の長期使用で見られる、皮膚の萎縮、毛細血管の拡張といった副作用の心配もほぼありません。分子量が大きく、正常な皮膚から吸収されにくいということも、安全性に寄与しています。
2歳の赤ちゃんから使用できます。

デルゴシチニブ

サイトカインにより誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞などの活性化を抑制し、アトピー性皮膚炎の炎症を和らげます。JAK阻害薬に分類されます。
使用時の刺激、副作用も少なく、生後6カ月から使用できる安全性の高い薬です。

ジファミラスト

ホスホジエステラーゼ4(PDE4)を選択的に阻害し、炎症性サイトカインの産生および皮膚の炎症を抑制します。ステロイドの維持期に使用し、ステロイドの使用量を減らすということも可能です。
安全性が高く、生後3カ月の赤ちゃんから使用することができます。

内服・注射治療

外用薬で十分な効果が得られない場合には、注射薬、内服薬を使用することがあります。
当院では、デュピルマブ、ネモリズマブ、トラロキヌマブなどの生物学的製剤の注射、ウパダシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブなどのJAK阻害薬の内服を行います。

デュピルマブ

アトピー性皮膚炎の皮疹、かゆみの原因をブロックする注射薬です。外用薬で十分な効果が得られない中等度以上のアトピー性皮膚炎が主な適応となります。
2週間ごとの注射によって投与しますが、2回目からは自己注射に切り替えることも可能です。

ネモリズマブ

アトピー性皮膚炎のかゆみの原因となるサイトカイン(IL-31)をターゲットとした生物学的製剤です。注射で投与します。コントロールの難しいヒスタミンではなく、IL-31を抑制することで、従来の治療で十分な結果が得られなかったアトピー性皮膚炎への効果が期待できます。自己注射も可能です。
ただし、対象となるのは13歳以上の患者様に限定されます。

トラロキヌマブ

アトピー性皮膚炎の方の皮膚に過剰に発現するサイトカイン(IL-13)をターゲットとした生物学的製剤です。注射投与することで、炎症反応やかゆみの抑制、バリア機能の改善といった効果が期待できます。
15歳以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。自己注射はできません。

ウパダシチニブ

1日1回、好きな時間に飲むことができるアトピー性皮膚炎の治療薬です。炎症を抑制し、早期からのかゆみ・湿疹の軽減が期待できます。飲み忘れを防ぐためにできるだけ内服の時間帯は一定にしておくことをおすすめしますが、さまざまなライフスタイルに対応できる点は大きな魅力です。
12歳から使用可能ですが、定期的な採血(血液検査)が必要です。

アブロシチニブ

ウパダシチニブと同様、1日1回、好きな時間に飲むことができるアトピー性皮膚炎の治療薬です。他のJAK阻害薬とは異なり、増量・減量のどちらにも対応できます。炎症を抑制し、早期からかゆみ・湿疹を軽減することが可能です。
12歳から使用可能ですが、定期的な採血(血液検査)が必要です。

バリシチニブ

1日1回、好きな時間に飲むことができます。複数のサイトカインの働きを抑制することで、かゆみ、炎症を和らげます。
2歳の赤ちゃんから使用可能ですが、定期的な採血(血液検査)が必要です。

スキンケア指導

保湿剤を用いた保湿を行い、皮膚の乾燥を防ぐとともに、かゆみを抑えます。これにより掻きむしりを防ぎ、悪循環から脱出できる可能性があります。
また、皮膚のバリア機能を回復させることにより、アレルゲンの侵入を防ぐという効果も期待できます。
朝、夕(お風呂あがり)の1日2回の保湿が基本となります。保湿剤の塗り方についても丁寧に指導いたしますので、ご安心ください。

注意事項

身体を洗う時に気をつけることはありますか?

手のひら、または泡立てネットを使って石鹸をよく泡立てて、必ず手のひらを使って優しく洗います。泡立てネット、タオルなどで擦らないでください。頭を洗う時はシャンプーを使って構いませんが、この時も頭皮を擦りすぎないように注意してください。
洗い終わったら、ぬるま湯でシャンプーや石鹸を優しく、しっかりと落とします。
お風呂からあがったら、タオルを皮膚に押し付けるようにして水分を拭き取り、すぐに保湿をします。
なお、かゆみは身体が温まると強くなります。熱すぎる湯に浸かる、長風呂をする、サウナに入るといったことは控えましょう。

衣類の選び方のポイントはありますか?

刺激の少ない木綿素材のものがおすすめです。重ね着をする場合は、肌着だけでも木綿ものを選びましょう。反対に、ポリエステル、ポリウレタン、アクリルといった素材は、かゆみを誘発しやすくなると言われています。
汗をかいた時には、シャワーを浴びる・タオルで優しく拭き取る・着替えるなどの対応も必要です。

寝具の注意点を教えてください。

敷布団、掛布団のカバーは、衣類と同様に木綿素材のものがおすすめです。また、汗をかきすぎないよう、季節に合った寝具を使ってください。
布団乾燥機の使用や天日干し、寝室の掃除・換気なども、小まめに行うことで症状を抑える効果が期待できます。

暑い季節と寒い季節、それぞれどのように過ごせばよいでしょうか?

汗は症状を悪化させるリスク要因となることもあるため、汗をかいた時には、シャワーを浴びる・タオルで優しく拭き取る・着替えるといった対応。
寒い季節は、空気の乾燥によって湿疹が悪化しがちです。処方された保湿剤を使用し、加湿器などを使って部屋の湿度を維持するのも有効です。

アトピー性皮膚炎を悪化させる環境要因を教えてください。

塵、埃、汗、細菌、ウイルス、摩擦、疲労、乾燥、ストレス、寝不足など、さまざまな要因があります。
症状を改善するためには、これらをできるだけ生活の中から減らすことが大切になります。

症状が強い時には、ステロイド外用薬の量を増やしても構いませんか?

薬は、必ず医師の指示に従ってご使用ください。ご自身の判断で薬の量を増やすと、思わぬ副作用が生じたり、逆に症状が悪化したりといった可能性があります。
症状が辛い場合には、ご来院ください。